私のクリニックでの取り組み

住み慣れた場所で最期まで安心して生活できるための医療を提供

神奈川県横須賀市 【 社会福祉法人 心の会 三輪医院 】
院長 千場 純 先生

全国でも自宅で最期を迎えられる人が多い神奈川県横須賀市で「安心して暮らせるための在宅医療」の普及に取り組む社会福祉法人心の会三輪医院。院長の千場 純先生は、診療の傍ら横浜市立大学医学部の臨床教授として、在宅医療とリウマチ性疾患の地域支援をテーマに講義をご担当されています。市や医師会と連携しグループホームやデイケアなど様々な社会資源を有効活用しながら、患者さんが住み慣れた家で安心して最期まで生活できるための医療を日々追求されています。

社会福祉法人 心の会 三輪医院
院長 千場 純 先生

外来患者さんの約2割が在宅医療に移行、今後も増加傾向

 千場先生は大学卒業後、横浜市立大学附属病院、三浦市立病院などを経て、1988年から横須賀市立うわまち病院(元国立横須賀病院)で呼吸器、膠原病、リウマチなどの診療に携わりながら、地域で開業されている先生方を対象に病診連携の勉強会を開催されていました。先代の三輪 末男院長もこの勉強会に熱心に参加されていたお一人でした。その後、千場先生は介護療養型医療施設のパシフィックホスピタル院長に就任、併設の在宅診療部でも精力的に関わっておられました。当時、病診連携の勉強会に参加されていた開業医の先生方との交流も続いており、あるとき三輪先生から後継を依頼されたのです。

 千場先生にとって三輪先生は横浜市大学附属病院勤務時代の医局の先輩でもあり、往診の実績には定評があったことから、千場先生はこの要請をご快諾され、介護保険制度がスタートした翌年の2001年、同医院の副院長に就任され、本格的に在宅医療に着手。2010年には院長、そして2015年には社会福祉法人「心の会」との合併を行い現在に至ります。

 現在、三輪医院の患者数は700~800人で、このうち500~600人が外来を受診し、約150人が在宅診療(グループホームを含む)を受けているそうです。在宅患者さんの半数以上はご自宅で療養生活を送っています。三輪医院のこの10年間の患者数の推移をみると、外来患者さんの約2割が在宅に移行しており、千場先生は、この傾向は今後も続くと考えておられます。

コーチングの手法を取り入れた患者さんへの栄養指導

院長 千場 純 先生
院長 千場 純 先生

 三輪医院では、患者さんの診断や治療だけにとどまらず、食事を中心とした生活支援も積極的に行っています。その背景には、市内のフリーランスの栄養士のグループを組織し、診療所に栄養士を派遣して患者さんの栄養指導を実施するという同市と医師会のユニークな取り組みがあります。現在、市内の10~15施設がこのサービスを利用しており、必要に応じて適宜、栄養士の栄養指導を受けられる本システムは、患者さんにとって大きなメリットとなっています。

 千場先生は、副院長になった当初から、このシステムを利用し、栄養指導にコーチングの手法を取り入れています。

 「例えば、スポーツなどではコーチやトレーナーが上に立って叱咤激励しながら選手を指導していく方法よりも選手の目線で並走しながら相談に乗って助言することで選手のモチベーションを向上・維持していく方法のほうが良い結果につながる可能性があると言われています。医療現場も同様に、栄養士がコーチ、トレーナー役となり、ポジティブな視点で患者さんの栄養指導を実践するべきです」(千場先生)。

 また、在宅医療の意義について次のように語られています。

 「高齢患者さんの場合、ご家族や訪問ヘルパーの協力が不可欠であり、家族ぐるみ、生活ぐるみでサポートする必要があります。特にメタボリックシンドローム関連疾患をはじめとする慢性疾患を有する患者の在宅医療はエンディングケアの観点からも、大変意義のある取り組みと考えています」(千場先生)。

患者さんの“活気”から亜鉛不足の状態を判断

 千場先生は、患者さんの食事・栄養面で亜鉛の摂取を重視されていますが、一般の方々に対しての啓発は十分ではないと指摘されています。

 「亜鉛という栄養素は体内でどのような働きをするのか、どのような食品に含まれているのか、亜鉛が不足すると身体や健康にどのような影響があるのかなど、一般的にはあまり知られていません。鉄が不足すれば「鉄欠乏性の貧血」、カルシウムの不足であれば「骨粗鬆症で骨折しやすくなる」など、多くの人が共通のイメージを持っていますが、同じミネラルの仲間でも馴染みが薄いのが亜鉛です。亜鉛についても同様に一般の方々への啓発が必要ではないでしょうか」(千場先生)。

 千場先生は、40年近くも前になりますが大学での研究テーマとしてシェーグレン症候群の症状である味覚障害に亜鉛が関与する場合があることに着目し、低亜鉛血症のスクリーニングに取り組んだ経験をお持ちです。当時はまだ亜鉛の測定方法が確立しておらず、低亜鉛血症に対する治療薬もありませんでした。

 「味覚の受容器である味蕾は舌をはじめ口腔内に多く分布し、味蕾を構成する細胞は新陳代謝が盛んで、その寿命は約10日と言われています。新陳代謝に不可欠なミネラルが亜鉛であり、味覚障害の原因として亜鉛不足が注目されています。

 しかし、加齢とともに様々な感覚が鈍くなり、高齢者では味覚障害は主訴として現れにくいという特徴があります。傷が治りにくいというような他覚的な症状があれば亜鉛不足を疑うことができますが、高齢者の乏しい自覚症状から亜鉛不足をすくい上げるには、患者さんの全体像を観察することが大切です。一言で言えば“活気”です。栄養状態も含めて、見た目の状態からある程度、亜鉛不足を疑うことができます」(千場先生)。

亜鉛補充療法は血清亜鉛濃度の基準値を小刻みに見て適応

社会福祉法人 心の会 三輪医院 受付
社会福祉法人 心の会 三輪医院 受付

 当院ではまず、総合的な栄養評価を実施し、食事・栄養面での介入をしています。また、患者さんの“活気”スクリーニングで亜鉛不足の疑いがあり、血液検査で血清亜鉛濃度が低値であることが判明すると治療が必要となることがあります。日本臨床栄養学会(亜鉛欠乏症の診療指針2018)が提示している血清亜鉛濃度の基準値は80~130µg/dLであり、診断基準として60~80µg/dLを潜在性亜鉛欠乏、60µg/dL未満を亜鉛欠乏症としています。ただ、千場先生は、血清亜鉛濃度が60µg/dL未満でも数値を小刻みに見ると評価が変わってくると指摘されています。

 「60µg/dLを下回る57~58µg/dL程度の場合、症状と亜鉛の相関性がないケースが少なからず見られます。そのような場合、すぐに亜鉛補充療法を実施するのではなく、予防的な見地から食事・栄養面の介入が望ましいと考えています。50µg/dL台になって初めて症状との相関が見られてきますので、その時点で亜鉛補充療法を開始するケースが多い状況です。亜鉛補充療法を行う場合は、定期的に血清亜鉛の濃度を測るとともに、悪心・嘔吐などの副作用の発現に注意しています」(千場先生)。

 また、治療については「低亜鉛血症治療薬で期待できる効果だけを見るのでなく、患者さんの医療費負担なども考慮してQOLを維持・向上していくことが大切」とも述べられています。

千場 純 先生プロフィール

【略歴】
1975年 名古屋大学医学部卒業後、横浜市立大学附属病院、三浦市立病院ほかに勤務
1988年 国立横須賀病院(現横須賀市立うわまち病院)第一内科医長
1996年 パシフィックホスピタル病院長を歴任
2001年 三輪医院副院長、2010年同院長に就任
2015年 社会福祉法人 心の会 三輪医院院長

【所属学会】
日本リウマチ学会認定専門医、日本内科学会認定医、日本医師会認定産業医・スポーツ医、介護支援専門員指導者、認知症サポート医

取材日:2018年8月22日
社会福祉法人 心の会 三輪医院

社会福祉法人 心の会 三輪医院
診療科目:内科・リウマチ科・小児科
〒238-0056
神奈川県横須賀市鶴が丘2-3-2

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