私のクリニックでの取り組み

多職種との密度の濃い連携で、365日24時間の在宅療養支援を実現

京都市西京区 【 医療法人双樹会 よしき往診クリニック 】

院長 守上 佳樹 先生
よしき往診クリニック(京都市西京区)は、多職種(歯科医師、看護師、薬剤師、管理栄養士など)や多機関(基幹病院、大学病院、クリニック、地域包括センター、訪問看護ステーション、デイサービスなど)との密度の濃い連携と、院内独自の取り組みにより、365日24時間の対応が可能な在宅療養支援を実現しておられます。今回は、より良い在宅医療のための連携の手法や在宅医療における栄養不足の問題などについて、よしき往診クリニック院長の守上佳樹先生、薬剤師の平賀愛さん、広報の岩﨑有美さんにお話を伺いました。
よしき往診クリニック 内科・在宅医療
院長 守上 佳樹 先生、薬剤師 平賀 愛 さん、広報 岩﨑 有美 さん

高齢で通院が難しくなった患者さんを支えたい

院長 守上 佳樹 先生
院長 守上 佳樹 先生

 院長の守上先生は、金沢医科大学医学部卒業後、京都大学医学部附属病院と地元の基幹病院の総合内科で約10年間患者さんの診療にあたってこられ、2017年4月によしき往診クリニックを開業されました。守上先生は開業の経緯について次のように話されています。

「大学附属病院や基幹病院で勤務していた頃は、内科の外来と入院患者さんの診療に加えて救急外来にも携わっていました。年月が経過し、診療を行う中で気づいたことが『患者さんが高齢となり通院が難しくなっている』ということでした。また、高齢の患者さんが自宅で突然亡くなると、たとえその原因が老衰であっても警察の検視が入ることも知りました。そのような場合、医師が自宅に駆けつけて死亡診断書を作成すれば検視は避けられますが、病院勤務ではそれができずに歯がゆく感じていました。

 当時、高齢の患者さんを在宅で最期まで診てもらえる方法を探してみたのですが、適切な仕組みや施設はなかなか見つけることができませんでした。ならば自分でやってみよう、と考えたことが開業のきっかけです。

 開業2年目で、往診の患者数は180人を超えています。この数は2年目としては多い印象を持っていますが『いかに在宅医療へのニーズが高いか』ということの証拠と考えています」(守上先生)。

365日24時間の安心を患者さんに提供するために

 訪問時に診察して薬剤を渡すだけでは、十分な在宅医療にはならない、と話される守上先生。よしき往診クリニックの在宅医療について伺いました。

「24時間患者さんを診る体制を365日継続しなければ患者さんの本当の安心にはつながりません。この365日24時間の安心を提供できる体制を、いかに構築し継続するかが重要であり、それは当然、医師1人の努力だけでは不可能です。患者さんもご高齢の方ばかりでなく、小児科、皮膚科、精神科、神経内科の医師が関与しなければならない方もいらっしゃいます。そこで、当クリニックでは専門性を有する非常勤医師14名の協力を得ています。また、院内のスタッフの力を結集するために、メディカルコーディネーター(MC)という職種を新たに作り、医師とペアで往診する体制をとっています。MCは、訪問スケジュールの調整や患者さんの状況を記録するほか、多職種や多機関との連携を繋ぐ役割も担っています。これにより、医師は診療に専念でき、また、連携先との連絡や情報の共有もスムーズに行えるようになりました。当クリニックのスタッフは看護師、薬剤師、事務職など12人ですが、そのうち5人がMCとして活動しています」(守上先生)。

薬剤師 平賀 愛 さん
薬剤師 平賀 愛 さん

 MCとして活動されている薬剤師の平賀さんは、次のように語っておられます。

「以前、私は調剤薬局に勤務しており、主な業務は処方箋に従って調剤することでしたが、処方箋に医師の処方意図などは明記されておらず、情報は限られていました。一方、MCとして往診の医師とともに患者さんのご自宅に伺うと、医師の考えや方針をその場で認識することができますし、ご自宅に大量の残薬があることなども分かります。このような情報を連携先と共有できたり、薬剤師の日常業務に活かせることはとても意義があると考えています」(平賀さん)。

広報 岩﨑 有美 さん
広報 岩﨑 有美 さん

 広告代理店でマーケティングの経験をお持ちの広報の岩﨑さんは、次のように語っておられます。

「当クリニックに勤務するようになり、病院や施設から紹介された患者さんにアンケートを行ったところ、7割の方が『このような往診のサービスがあるとは知らなかった』と回答されました。在宅医療の認知度向上に向けた取り組みの必要性を痛感しました。また、現在、MCとして活動する中で、地域に根差した医療をいかに進めていくかを模索しています」(岩﨑さん)。

同じ職種同士でも「顔が見える連携」を目指す

 よしき往診クリニックが目指す在宅医療では、医師、看護師、薬剤師などによる密度の濃い連携が必須であることが窺がえます。守上先生はそのことに加え、同じ職種同士の連携も重要と指摘されています。

「医療ではチーム医療、多職種連携という言葉が頻繁に使われますが、異なる職種同士の連携だけでは十分とは言えない部分があります。例えば、医師や看護師が連携先の薬剤師とやり取りをする場合、職種ごとで普段使用している専門用語が微妙に異なることから、互いに納得するまでに時間がかかることがあります。同じ職種同士で連絡し合えればスムーズであり、認識の相違も起こりにくくなります。このような面もありますので、異なる職種の連携に加えて、施設間において同じ職種同士で互いに顔の見える関係にあることも大切だと考えています。

 そのような観点から、当クリニックの平賀薬剤師が中心となって『在宅DPCH会』という地域の薬剤師の会を立ち上げました。DPCHとは、ドラッグストア、薬局、クリニック、病院の頭文字です。また、西京区内のすべての病院と施設の管理栄養士が参加する『all西京栄養を考える会』が2017年12月に発足し、私と広報の岩﨑が世話人として勉強会などの活動に参加しています。私自身も在宅医療にかかわる若手医師を集め、意見交換会を行っています。今後、『若手在宅医の会』として発展させていきたいと考えています」(守上先生)。

フレイルへの対応や予防には栄養の改善が第一歩

 次に在宅医療おける栄養の重要性について伺いました。

 「在宅医療の対象はほとんどがご高齢の方々です。高齢者は運動機能が低下し、抑うつや認知機能低下がみられることもあり、その結果として社会活動が低下することがあります。また、口から食べることが減るとさらに運動機能が低下し、口腔の衛生状態も悪くなるという悪循環に陥り、要介護手前のフレイルという状態になってしまうこともあります。在宅医療でもフレイルの予防や改善は大きな課題となっていますが、そこでは、きっかけとなる栄養を改善することがまず求められると考えています。

 病院の栄養サポートチーム(NST)では、栄養状態を確認するための一つの指標として血清亜鉛濃度を測定していますが、当クリニックで血清亜鉛濃度を測定した188人の患者さんのうち、66人が亜鉛不足の状態でした。このことからも、ご高齢の患者さんでは栄養状態に留意しなければならないことが分かります」(守上先生)。

※フレイル:要介護状態に至る前段階として位置づけられており、身体的脆弱性のみならず精神心理的脆弱性や社会的脆弱性などの多面的な問題を抱えやすく、自立障害や死亡を含む健康障害を招きやすい状態と考えられている

亜鉛不足の改善に向けて

よしき往診クリニックの皆さん
よしき往診クリニックの皆さん

 よしき往診クリニックでは総合的な栄養評価を行い、適切な対応をされていますが、亜鉛不足の患者さんも多く見られるそうです。そうした患者さんへの対応について伺いました。

 「従来から病院のNSTでは血清亜鉛濃度を栄養状態の指標としてきましたが、近年、亜鉛不足が様々な症状に関係している可能性があることが分かってきました。亜鉛不足を問題視する医師は以前から存在しており、食事療法、効能外使用ですが硫酸亜鉛、プロマックによる亜鉛補充療法が行われていました。しかし、現在は、低亜鉛血症治療薬が保険適応できるようになり、状況が変わったといえるでしょう。

 私の経験上、患者さんの中に亜鉛不足の人が多いということだけでなく、血清亜鉛濃度の数値が非常に低い方もお見受けします。これらのことから初診の患者さんには、血清亜鉛濃度測定をお勧めするようになりました。また、初診ではない患者さんでも3ヵ月に1度の血液検査の際に、血清亜鉛濃度も測定して推移を見ています。

 亜鉛不足は、味覚障害、褥瘡(難治性)、易感染性、食欲低下、貧血などに関連すると言われています。年齢の割に活力のない患者さんにはこれらの症状の有無を確認し、総合的な栄養評価を行ったうえで、血清亜鉛濃度の測定により低亜鉛血症であることが認められた場合、亜鉛補充療法を適応します。亜鉛補充療法では、定期的な血清亜鉛・銅濃度の測定と悪心・嘔吐などの副作用の発現に注意しています」(守上先生)。

在宅医療のさらなる啓発と、患者さんと医療従事者を適切に結び付けることが大切

 最後に、守上先生に在宅医療にかける思いをお話し頂きました。

「現在、在宅医療を必要とされている人は顕在化している人だけではないと思っています。顕在化することなく困っていらっしゃる方々のお役にも立ちたいと考えています。そのためにも、在宅医療を色々な人に広く知ってもらうことが必要だと思いますし、地域において患者さんと医療従事者を適切に結び付けていくことも大切なことだと考えています。今後も、在宅医療を必要とされている多くの患者さんのために挑戦を続けていきたいと思います」(守上先生)。

守上 佳樹 先生プロフィール

【略歴】
2002年 広島大学学校教育学部卒業
2008年 金沢医科大学医学部医学科卒業
2008年 京都大学医学部附属病院老年内科入局
2010年 三菱京都病院総合内科
2017年 医療法人双樹会 よしき往診クリニック開業

【所属学会】
日本内科学会認定内科医、日本老年医学会認定老年病専門医

取材日:2018年10月17日
医療法人双樹会 よしき往診クリニック

医療法人双樹会 よしき往診クリニック
診療科目:内科・在宅医療
〒615-8087
京都府京都市西京区桂御所町1-27

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